エラ削り

● エラ削り(えら切り)の合併症

●弛み:骨を小さくするわけですから、余った軟部組織が弛むわけですが、顎・エラ・頬骨で一番弛みが少ないのはエラです。今主流の下顎骨の外板を削り・下縁を切り上げる術式では横から見た顔の奥行きがありますから余り皮膚が弛みません。
エラ削りで前の方、顎の近くの骨削りとなりますと軽度ですが二重顎になる傾向です。しかしこれは半年まで待って肌のハリの回復を待ちますと若い人ならば割と良くなります。もし気になるレベルで二重顎が残れば脂肪吸引を行いますがエラ削り主体で手術した人なら、まず不要でしょう。

●神経麻痺: 乱暴な手術操作によっては、知覚枝であるオトガイ(頤)神経を切断でもすれば下口唇周囲・顎先に麻痺が生じるでしょう。これは具体的には術中にオトガイ神経が骨の神経孔から出ているところから剥き出しになり、乱暴な操作で神経を切ってしまう事から起こり得ると言えます。患者さんの中には、ギリギリまで出来るだけ骨を削って下さい。とも言われる方がいますが、あまりに大胆に骨削り&骨切りを行う事になるのは上記神経損傷のリスクを増す事になります。但しオトガイ神経は仮に切断しても神経縫合すれば知覚の回復の良いのも事実です。時間は掛かりますが2年もすれば全快すると言います。なお、オトガイ神経が術中に剥き出しになる以上、術後しばらくの不全麻痺は大なり小なり起きるものです。これらはしばらくするといつのまにか回復しています。 なお、運動枝である顔面神経麻痺は 、口腔内アプローチで行く以上、通常は起き得ません。起きても圧迫による一過性の麻痺でいずれ全快します。逆に皮膚側アプローチでは切断の可能性はあります。

●骨折:他に有り得る合併症として、えら(エラ)の骨切りをしている時の骨折があります。これも余りに乱暴な操作、またはギリギリまでを追い求める大胆な骨切りで、そのリスクが増すと言えます。

● 術後の腫れの理由と対策

エラ削り エラ削りで正面顔の改善のため、下顎骨外板をどんどん削って骨髄を剥き出しにするのが、この手術の要なのですが、その分腫れが続きます。よく社会復帰は3週間後と言いますが、上記の写真のように、1か月ではまだまだ腫れがあり、本当の完成は3ヶ月はかかると観た方が良いです。他の画像は≫こちら
 さて骨の整形手術後、骨髄がむき出しになると、骨髄性の出血が術後の夜くらいまでは続くものです。 ですから血圧を上げないよう無用に体を動かす事をさせないためにも入院すべきですし、入院する以上、翌日のガーゼ交換まで創内(傷の奥)にドレーンを留置し、出血した分は、大部分が体外に排出できるようにすべきです。圧迫包帯も入院ですから腫れを抑えるため、ことさらガッチリ巻きます。 以上、全身麻酔後の事とは別に、術後当日帰宅させるのは推奨できるものではありません。
 出血とは別の腫れは、手術で扱う範囲(広さ)とどれくらい愛護的操作を行ったかで決まるものです。手術で創の展開においては骨膜剥離子を丁寧に扱い、全てが骨膜の下で剥離した上で、骨の操作を行うべきで、急いで剥離がラフになり骨膜をバサバサにしてしまうような剥離では、それこそ術後は顔がパンパンに腫れます。 腫れを抑える薬ですが、一般の痛み止めが「消炎鎮痛剤」という名称なので「消炎」に期待して腫れ防止の効用を期待しがちですが、実は抗腫脹効果は、ほとんど期待出来ません。 薬剤としては、ヤスミクリニックでは術中や術直後の、副腎皮質ステロイドホルモンの静脈内投与と、あまり効果は期待できませんが「抗腫脹薬」を内服して頂いています。 顔面骨の手術は、術後3週間くらいまでは目立つ腫れが生じるのを覚悟の上で行う手術です。顔の「骨」を切ったり削ってしまうのですから腫れがひどくて当然と考えて下さい。

●全身麻酔

 顔面骨手術の全身麻酔は、メスの切開や骨削術でも動きもせず、呼吸を止め人工呼吸器(ベンチレーター)で呼吸管理する、言わば人を仮死状態にするものです。単なる熟睡とは次元が違います。体に負担が掛かるのは事実ですから、事前の採血・心電図・胸のレントゲンで検査してみる必要があります。 なお、全身麻酔の薬の選択で手術後の夜の体調が違ってきます。もちろん個体差もありますが、昨今では、術後の悪心・嘔吐などの副作用が随分少なくなりました。 また 本来手術後は痛がったり、吐いては、そのために血圧が上がり、出血の原因になります。出血は腫れにつながります。鎮痛薬や抗嘔吐剤を入院管理の上で使用するのがより良いと言えます。

● 超音波骨メスなど

エラ削り血管、神経を愛護的に扱いながら骨を削るには超音波骨切り装置、超音波骨メスが有用です。これは超音波の振動が血管や神経のような軟部では振動と伴に震えるだけで切れはしないのに対し、骨の場合は震えるだけのような受け流しが出来ず削られて行くのです。 安全性が高い反面、現状では削る速度がかなり遅いのが難点です。 しかし、大出血や神経麻痺へのリスクのある部位や皮膚切開をを最小限したい部位(頬骨弓の後方骨切りのためのモミアゲの切開部)での骨削りでは、その有用性を発揮します。従って従来の骨削り器と併用し主に後半の仕上げに使用するのが良いと思われます。これを平成16年度の日本美容外科学科(JSAPS)でDr.木村が発表しました。超音波骨メスは写真のような本体とハンドピースから構成されており、ハンドピース先端の動きは前後方向の振動とねじりの2つ振動を併せ持った振動を生じさせています(LTチップ)。これにより従来より骨削りのスピードが上がりました。 美容外科の骨削りでこの超音波骨削り器がそれほど普及していないのは、手術時間がやや伸びてしまうのに加えて 超音波骨メスと本体のセット価格は納入価格が500万円を超えますので安直に買えないという事があるからと思います。、

●手術の医療水準の向上

 昭和50年代以前の美容外科では、全般的に、骨削り(骨切りは滅多になく)には消極的で、顎は二重顎のラインから切開で骨皮質を程々削るだけ、えら(エラ)においては下顎角の少し下の皮膚を切開、角の部分を削るだけ、頬は口腔内からヤスリで削るだけというスタイルが多かったようです。
 その背景には当時の全身麻酔薬の負担が大きく、まともに掛けても術後肝臓を傷めるなどの懸念材料もありましたし、当時の美容外科自体が裏路地のビルの一室でひっそりやるような感じで、近代的設備を整える体制を取らなかった事もありました。
しかし1990年以降、薬剤等の全身麻酔の水準が向上し、また美容外科に大々的な設備の所が登場し、そこで働いた医師が開業すれば同様の施設を作り、様相が格段の向上をみるようになりました。
 骨切りの技術水準も上がり、図説で解説しましたような患者さん満足の結果を出せるようになりました。
ただ、美容外科は医療水準の差が施設や担当医で大きすぎるのが他科と比較しよく言われていますが、こと顔面骨の手術も、この足並みの乱れの幅は大きいとみます。
 極端な施設では、昔のように局所麻酔だけで骨の治療を行う所があります。皮膚に傷が残った割には効果が少な過ぎるなどの苦情が生じるものです。また、局所麻酔では、骨を削る音や振動に耐え切れないものです。担当医が耳で聞く「ガリガリ!」という音とは別に、患者さんには骨伝道で鼓膜を介さず内耳に伝わる音があり、それは想像を絶する音なのです。